なんだかSeeed StudioのWio Terminalが話題ですね。
秋月やスイッチサイエンスでも取り扱いが始まりましたが、
即在庫切れになったりしているようで大人気みたいです。
— じてんしゃっぷ (@jitenshap) May 15, 2020
会社で買ってもらったので、週末いろいろいじってみました。
内容としてはMicroChipのATSAMD51系MCUに、RealtekのRTL8720DNが乗っていて、
M5Stackのように画面やら何やらいろいろついてケースに入っている豪華マイコンボードです。
公式通販
https://jp.seeedstudio.com/Wio-Terminal-p-4509.html
公式Wiki
https://wiki.seeedstudio.com/jp/Wio-Terminal-Getting-Started/
5GHzのWi-Fiに対応した新しいWi-Fi搭載マイコンです。
これを早く使ってみたいという人も多かったはずで、
Wio Terminalの登場により、いち早く技適マーク付きの試せる環境が手に入りました。
どうやらメインマイコンのSAMDと、Wi-Fi用のRTL8720DNはSPIでつながっており、
このライブラリでArduino Wi-Fi API互換にラップしていますが、
実は内部ではATコマンドを叩いて通信しているようです。すごい!
Wio Terminal、— じてんしゃっぷ (@jitenshap) May 16, 2020
ATコマンドどこで叩いてるんだろと思ったらesp-at-libのesp_int.cにあった。ATコマンドを全部ラップしてArduino WiFi API互換にしてるのすごいな…https://t.co/PIIznQUkGt pic.twitter.com/fsldr5mbSN
さて、本題ですが、せっかくなので温めていたネタを、
この新しいボードで試してみようとやってみたのが今回のWi-Fiを使った測位です。
スマートフォンなんかではよくWi-Fiをオンにするとマップアプリの測位が早くなったり、
正確な位置が表示されやすくなったりするのはご存知な方も多いと思います。
これは、Googleのデータベースから、
飛んでいるWi-Fi APのMACアドレスと緯度経度を紐付けた情報が提供されているから
実現できています。
(Google以外にも、Apple他も同じことをしているのかもしれませんが、
よく知りません。)
あまり知られていませんが、Wi-Fi APの情報から現在位置を推定するAPIは公開されていて、スマートフォンに組み込みの機能以外からもアクセスできるようになっています。
今回はこれを使ってみようと思います。
先に準備を。
Google アカウントにログインして、APIコンソールを開きます。
https://console.developers.google.com/?hl=JA
すでにプロジェクトがある場合もあると思いますが、
ここでははじめに新規プロジェクトを作っていきます。
Google APIsと書いてある文字の右側をクリックしてプロジェクトの選択画面を表示
新しいプロジェクトボタンをクリック
適当にわかりやすい名前をつけます。
こんな画面に飛ばされたら、APIとサービスを検索の検索窓に
Geolocationと入力
Geolocation APIが出てきたらクリック
有効にする。
外部を選択。次の画面の写真はありませんが、
名前の場所だけ埋めればとりあえず使えます。
このへんからはセキュリティに関わってくるので、各自調べながらやってください。
OAuth認証画面が作成できたら、
認証情報のページで認証情報を作成→APIキーをクリック
APIキーが取得できたら準備完了です。
このレポジトリにWio Terminalに書き込むスケッチと、Node.jsスクリプトがあります。
git cloneしてArduino IDEで書き込んだら、SDカードを入れて起動するだけで、
30秒おきにスキャンした周囲のWi-Fi APの情報がSDカードに保存されていきます。
終わったら、PCにSDカード内のbssids.csvをコピーします。
↑のレポジトリに入っている、getloc.jsと同じディレクトリにコピーしてください。
Node.jsの実行環境がない場合は、適当にインストールしてください。
また、CSVパーサーライブラリのインストールが必要です。
適宜
npm install csv-parse
とかやってインストールしましょう。
get_loc.jsを開いて、YOUR_API_KEYの部分に先ほど取得したAPIキーを貼り付けて、
node getloc.js
すると、result.csvというファイル名で緯度経度に変換された結果が保存されます。
読み方ですが、1列目の数字はタイムスタンプ(起動時からのミリ秒)、
2列目に緯度、経度、誤差(m)と続く構造です。
めんどくさがって結果出力をKMLファイルとかにしてないわけですが、
世の中には便利なサイトがありまして、CSVを貼るとKMLにしてくれるサイトがあります。
ここに、CSVの中身を貼って、
こんな設定にしてあげるとあらかんたん、KMLファイルとして出力されます。
(ピンのタイトルがタイムスタンプになります)
Google Mapsのマイマップ機能やGoogle Earthにインポートすると結果が見られます。
こんな感じでわりとかんたんにWi-Fiだけを使った測位ができてしまいます。
Wio Terminalには3G/LTEのようなWWANがありませんが、
テザリングやモバイルルータを使うなどすれば
リアルタイムでの測位も可能と思います。
(その場合はモバイルルータのMACアドレスを除外するなど
ちょっと工夫が必要そうです。)
Wio Terminalで周辺のWi-Fi APのBSSIDをMicroSDにログして、帰ったあとデータを吸い出してGoogle GeoLocation APIで緯度経度に変換、会社の最寄り駅から会社までの経路をGPSなしで測位に成功。 pic.twitter.com/7phv5SyD4a— じてんしゃっぷ (@jitenshap) May 17, 2020
なお、Google Geolocation APIがなぜそれほど浸透していないのか、
理由はおそらく簡単で、料金だと思います。
↑の画像にも実はチラっと写っていますが、
利用料金なんと1000リクエストで5USDくらいだそうです。
この記事を読んで試す場合、さすがに無料枠内で試せると思いますが、
高頻度で24時間動かし続けたり、商用で何台もクライアントがいると
かなりの金額になりそうです…。